わが国の透析患者数は年々増加し、長期透析患者が増えるとともに透析脊椎症も増えてきています。
透析脊椎症とは
- とくに首の骨に好発
- 背骨間の椎間板のすきまが狭くなる
- 背骨の縁(終板)が破壊される
- 骨棘(骨の増殖性変化)はなし
などを特徴とする背骨を進行性に破壊していく疾患です。その原因としては、透析によってアミロイドという物質が背骨に沈着し、それに対する体の反応性変化によって軟骨や骨を破壊していくためと考えられています。
特徴としては、頚椎の5番目から7番目、もしくは腰椎の3番目から5番目のよく動く部位に多く認められます。透析を開始して15年以上、透析を開始した年が早い患者では有意に発症しやすいです。そもそも透析患者は様々な全身疾患が複雑に絡みあっています。手術の侵襲や麻酔のストレスによって、体のバランス(電解質)の異常、それに伴う心臓や呼吸機能に障害を引き起こしたり、貧血が進行したり、高Ca(カルシウム)血症などを引き起こし、全身状態の悪化や場合によっては命にかかわることがあります。透析脊椎症患者の手術に伴う死亡率は2〜23%との報告があります。
治療については、透析脊椎症による軽度の痛みやしびれなどでは保存的に慎重に経過を診ていきますが、高度の脱力(麻痺)や膀胱(残尿感など)や直腸(便秘)に障害を起こした場合には保存的治療は無効で、手術が必要となります。しかし手術は、透析脊椎症患者の骨はもろく(脆弱)非常に難しいです。背骨の一部を削って神経の圧迫をとるだけの手術では、その部位に高率に不安定性の進行がすすみ、症状が再発することがあります(約35%)。背骨を金属で固定しても、広範囲に行うと短期間に隣の背骨に障害(約35%)を生じます。また、手術では透析の原因を治療することはできないので、透析のコントロールが必要です。
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