Okayama University Hospital, Department of Orthopaedic Surgery, Spine Group
岡山大学病院 整形外科 脊椎・脊髄グループ
疾患の説明 - 脊髄癒着性クモ膜炎、脊髄クモ膜嚢胞(くもまくのほう)

 脊髄の周りには、内から外に向かい、軟膜、クモ膜、硬膜と3種類の膜があり、これらが脊髄を包んでいます。クモ膜と軟膜の間の隙間をくも膜下腔といい、そこにできる袋状の病変をクモ膜嚢胞といいます。
 嚢胞の中には、髄液と同一性状の液体がはいっています。症状は嚢胞の圧迫による局所神経症状として四肢の麻痺、歩行障害、排尿障害などがありますが、脊髄空洞症を合併するとそれらの症状はより重症となります。
 診断はMRIと脊髄造影でなされます。治療は症状のまったくない、偶然に発見された嚢胞の場合は経過観察で十分ですが、かなりの症状のある嚢胞に対しては手術が必要といわれています。
 脊髄空洞症をきたした場合には(1)クモ膜下腔-クモ膜下腔のバイパス術(S-S Bypass)、(2)脊髄空洞-クモ膜下腔シャント術(S-S Shunt)、(3)癒着剥離術(Untethering)のいずれかが必要です。(2)の方法はシャント機能不全が20-50%報告されており、(3)の方法ははがす時に脊髄の損傷をきたしたり再癒着が多いとされています。
 われわれは積極的にクモ膜下腔-クモ膜下腔のバイパス術(S-S Bypass)を行っています。手術成績は腰椎レベルを除くと良好とされています。しかし、再発率が高いこと、すでに脊髄の障害が不可逆的になっている場合はその回復は難しいとされています。


術前MRI 術後MRI SSバイパス
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