悪性骨軟部腫瘍の治療の流れ - 画像診断

1.レントゲン
 骨腫瘍は、ほとんどの場合単純レントゲンによって発見されます。近年MRIをはじめとするさまざまな画像診断が登場していますが、骨腫瘍の診断ではレントゲンが最も重要と言っても過言ではないでしょう。腫瘍の占拠病変部位とその広がり、骨破壊の程度、骨膜反応の状態、骨化や石灰化の有無などを読影します。初期診断として非常に重要な検査です。
2.MRI
 MRIは優れたコントラスト分解能を持っているため、骨軟部腫瘍の範囲、内部構造、神経血管との解剖学的な関係などがかなりの正確さで診断できるようになってきました。現在、骨軟部腫瘍を治療する際には、不可欠な検査となっています。
 また、MRIで骨軟部腫瘍を評価する場合、可能な限り造影剤を用いた造影MRIを行うべきと考えています。造影MRIは、腫瘍の壊死の程度や、悪性度の評価、周囲組織の浮腫・炎症、また良性/悪性の鑑別など、診断に非常に有用なためです。
 岡山大学整形外科では、光生病院放射線部(岡山大学から約5分)と協力して、経時的なMRI造影検査法であるダイナミックMRIを行っています。このダイナミックMRIを行うことにより、良性/悪性の鑑別や化学療法の効果をより正確に判定することが可能となってきました。岡山大学整形外科では、今までに300人以上の患者さんにダイナミックMRIを行い、評価しています。そして、ダイナミックMRIが非常に有用な検査法であることをさまざまな学会発表、論文発表して、その有用性が広く認められています。
3.CTスキャン
 CTスキャンは、骨の詳細な評価に有用で、レントゲンやMRIで正確に診断できない皮質骨の破壊の程度、海綿骨の骨破壊の状態、微細な骨膜反応などの評価が可能となります。
4.核医学検査
骨シンチグラフィー:
 低い放射線を放出するテクネシウムで標識された化合物を静脈注射した後に、ガンマカメラで撮影する検査です。骨形成が盛んに行われている部位にこの化合物が集積し、黒く写ります。悪性骨腫瘍で高集積しますが、良性骨腫瘍や、骨折の治療中、骨の炎症でも集積は見られます。全身の骨の検査が1回の検査で可能で、病変が他の骨や、同じ骨の他の部位にある場合に有用な検査となります。また悪性軟部腫瘍の場合、骨への浸潤の評価も可能です。
 また、骨肉腫などの骨形成性の悪性骨腫瘍で、化学療法の効果判定(腫瘍が壊死しているかどうかの判定)に有用であることもわかっており、岡山大学整形外科では論文発表しています。
タリウムシンチグラフィー:
 骨シンチグラフィーと同様に、タリウムという放射線同位元素で標識した化合物を静脈注射した後に、ガンマカメラで撮影する検査です。通常早期像(15分〜30分後)と晩期像(3〜4時間後)を撮影します。
 この化合物は、悪性腫瘍に集積するという性質を持っているため、高悪性度の骨軟部腫瘍では集積が多く、良性骨軟部腫瘍ではほとんど集積が見られません。この性質を利用して、良性/悪性の鑑別、および化学療法の効果判定(腫瘍が壊死しているかどうかの判定)に有用と考えられています。岡山大学整形外科では、現在までに500人以上の患者さんにこの検査を行って診断に応用しています。この結果を評価して学会発表や論文発表を行い、日本でも広く認められてきている検査となってきています。
5.血管造影
 悪性骨軟部腫瘍では、一般に腫瘍血管と呼ばれる異常な血管が腫瘍内に多く見られるため、良性/悪性の診断のために血管造影を以前は検査していました。しかし、動脈に針をさして血管内で操作するため、患者さんの負担が大きく、また入院も必要なため、最近では、MRIや核医学検査などのより負担が少なく、有用な検査を行うことで、血管造影は必要なくなってきました。しかし、血管系骨腫瘍や、重要な血管に接している骨腫瘍など、必要に応じて行っています。

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