脊髄係留症候群とは脊髄がある場所に係留(引きとどまる)して神経が引き伸ばされることで神経に何らかの障害をきたした状態をいいます。潜在性二分脊椎症(せんざいせいにぶんせきついしょう)は、発生段階の脊髄の癒合不全に基づく奇形性病変の総称です。この疾患では、70〜80%の頻度で背部に皮膚異常が見られます(異常毛髪や多毛、皮膚洞や皮膚陥凹など)。脂肪腫が原因の場合は、脊髄脂肪腫、脂肪脊髄髄膜瘤などとも呼ばれます。これらの病名はほぼ同じ状態を表している。乳幼児では、皮膚の異常をきっかけに、CTやMRIなどの検査がおこなわれ、その結果として、病気が診断される場合が多いとされています。 症状としては、排便障害(約70%)、下肢運動障害(約80%)、痛みなどの感覚障害(約80%)があります。両下肢の 運動障害として、足が動かない(麻痺)、足の変形、左右の足が非対称、足が細い、などがみられます。感覚障害として、靴ずれやその部の潰瘍、腰背部、下肢か ら足への放散痛や局所のしびれなどがあります。生まれて間もない時はこれらの神経症状がないことや、あっても見つからないことがあり、成人になってから生じることも少なくありません。 治療法はある程度は確立されている。症状のまったくない場合、予防的手術を勧める意見もありますが、一般的には経過観察でよいとされています。ある程度の症状があり、それが進行性の場合には手術が考慮されます。しかし手術の時期、手術方法には意見が分かれています。われわれの施設では症状が出てから手術しても、症状がすべて消えることはすくないために、症状の悪化予防という考えからも積極的に早期手術治療を行っています。 手術には大きく分けて、脊椎短縮術といって入れ物のほうを短くする方法と係留解除術といって癒着している脊髄をはがす方法がありますが、われわれは後者を行っています。手術をより安全に行うために、脊髄モニタリングといって電気刺激などで神経の確認作業を行い、顕微鏡を使用して細かな神経の状況を把握した上で確実な手術を行っています。